丸二家具社長 新田氏にインタビュー
家具修理職人:
尾道は、昔からタンスづくりが盛んだったのでしょうか?
新田社長:
このあたりは、昔から商人の町として栄えました。
庄屋などのお金持ちが多かったですね。
仏閣なんかもあって、空爆を受けていませんから、焼けずに古い桐タンスや、黒檀のタンスなどが残っているのだと思います。
先日、ある造り酒屋さんに修理を依頼されたのですが、明治23年、その当時500円で買われたタンスでした。500円というと、10軒の家が建つといわれるほど、相当高価なものです。
昔のタンスには、いろんな仕掛けがしてあるのですが、この奥を見てください。これはハーモニカが取り付けられていて、引き出しを開けると音が鳴る仕組みです。(画像1)
タンスは、昔は金庫代わりとして高価なものを仕舞うという習慣があって、盗難防犯として、ハーモニカや、隠し扉などさまざまな仕掛けが施されています。
タンスをなぜひと竿、ふた竿と数えるかご存知ですか?
このもち手、ここに竿を通して婚礼家具などは運んだものです。
(画像2)
家具修理職人:
見積もりの方法を教えてください。
新田社長:
修理ですが、見積もりは非常に難しいです。
まず、お客様は「いくらかかるの?」と気にされます。
一応お宅に伺い、どのような箇所を修理されたいのかお聞きした上で算出するのですが、作業していくうちに別の箇所の壊れや、傷など見つけてしまう場合など、当初の見積もりより、ずっと手間がかかってしまう場合が多いのです。
大抵、予算をはるかにオーバーしてしまう作業になりますが、お客様の中には、それでもそんなかかるの?とおっしゃる方も多いので、辛いなと思いますね。(笑)
職人としては、いくら天板だけでいいとおっしゃっても、釘が抜けていたり、木が割れていればパテで埋めてあげようとか、黒ずんでいれば、キレイにしたいと思います。可能な限り、お客様の喜ぶ顔が見たいので、手を尽くしたいわけです。修理再生は、気持ちがないとあわない仕事だと思いますよ。
これ真鋳なんですが、真っ黒でしょ?でも磨くと、ぴかぴかになるんですよ。(画像3)
お客様がこのぴかぴかになった取っ手を見たら、どういう顔をされるかな、なんて想像しながら磨くのは楽しいですよ。
やはりモノづくりに携わる者として、適当なことはできません。少々損してもいい、お客様の喜ぶ顔を見たい、という気持ちで作業しています。
家具修理職人:
修理の方法について教えてください。
新田社長:
修理再生は、工場、職人それぞれ独自のノウハウで行うわけですから、やり方も異なります。修理も、ひとつとして画一したやり方はありません。なので、状態を見て最善の方法を考え取り組みます。
修理例:衣装タンス -数年前古物商より購入-
修理依頼:天板のみ塗り、キレイに仕上げて欲しい。(画像4)
引き出しがスムーズに開くようにして欲しい。 |
新田社長:
この「キレイに」というものの見極めが、抽象的で非常に難しいのです。
もともとアンティークなわけですから、手を入れすぎても味がなくなってしまう。
でも「キレイに」を期待されている方は、ピカピカに仕上げて欲しい方もいらっしゃるわけで、できるだけ現状の味を保とうとすると、「え?これだけ?」と修理内容に不満を持っていただいても困りますのでね。現地に伺って細かく状態を見ることができれば良いのですが、お伺いすることが難しければインターネットで写真をみた状態だけで、ある程度見積もりをしなければなりません。しかし、現物を見て写真では分からない壊れを見つけてびっくりということもあります。
また、インターネット上では、樹種の特定はできません。
お客様に「樹種はなんですか?」とお尋ねしてもお分かりになる方はほとんどいらっしゃいません。たとえば釘を一本抜くにも、硬い木と柔らかい木、たとえばケヤキと杉では全然異なります。当然硬いほうが抜けにくい、また古い釘なので途中折れてしまう場合もあって、その場合は、釘の位置をずらしたり、金具の位置をずらして打ちますので、作業の時間と手間がかかるわけです。
家具修理職人:
現状どのくらいの修理依頼がありますか?
新田社長:
現在、タンスが5、6竿、椅子が二組、それとまだ工場に持ち帰っていないタンスが3竿、修理を待っている状態です。
現状1、2ヶ月待ちの状態ですね。
波があるのですが、以前は半年待ちという状態の時もありました。
家具修理職人:
修理依頼がもちろんメインのお仕事ではないわけですが、どのような形で依頼がきますか?
新田社長:
やはり、口コミが一番です。そういう経緯でうちを見つけていただいているかわからないのですが、遠方(大阪)などからも修理依頼がきます。
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